慰謝料について
1.離婚すれば慰謝料が必ず貰える訳ではありません
「離婚をすると、慰謝料が貰える」と考えておられる方がいらっしゃいますが、慰謝料を貰えるケースというのは、あくまでも相手方が離婚に至る原因を作った場合です。
慰謝料というのは、結婚生活の中で、浮気や不倫、DV(ドメスティック・バイオレンス)等により精神的に苦痛を受けた側が、その原因を作った相手方(「有責配偶者」といいます)に対して請求できる金額のことです。
この原因とは、民法770条により、以下の5種類が定められております。(「法定離婚原因」といいます)
- 配偶者に不貞行為(浮気・不倫など)が有ったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続しがたい重大な理由があるとき
つまり、性格の不一致や、宗教上の対立などのように、双方に離婚の原因が存在している場合や、逆にどちらにも原因が無い場合(姑問題など)には、慰謝料を請求することはできません。
ただし、例外的に、一方当事者が離婚に強く反対しているケースにおいて、慰謝料を支払うことで離婚に同意してもらうなどが条件となっている場合には、慰謝料が支払われるケースもあります。
2.慰謝料請求には消滅時効があります
慰謝料の請求は、民法724条(除斥期間)の規定により、離婚が成立した日から3年を経過すると消滅時効にかかり、行うことができなくなりますのでご注意ください。
3.浮気・不倫の相手方への慰謝料請求は別途可能です
離婚の原因を作った相手方の女性(男性)に対しても、別途慰謝料を請求することが可能です。
これは、配偶者への慰謝料請求とは別に行うことが可能です。
ただし、浮気や不倫などの証拠が存在していなかったり、相手方の住所氏名が分からなければ、請求することができません。
4.慰謝料の金額はどうやって決まるのか
協議離婚の場合においては、慰謝料を支払うのか支払わないのか、金額はいくらで一括払いか分割払いにするかなどの内容は、あくまでも夫婦が自由に話し合って決定することとなり、慰謝料の算出には明確な算定基準や算定方法は定められておりません。
「慰謝料の相場は100万円~300万円くらい」
というような話題がよく出ておりますが、当事者の合意事項である以上、個別のケースによって金額は大きく異なりますので、一概に「このケースならばいくらでしょう」とは言えません。
但し、算定の要素として、1.婚姻期間、2.有責性(の強弱)、3.(支払い義務者の)資力などが離婚訴訟などにおいては考慮されることとなります。
尚、1.婚姻期間は長いほうが、3.資力については高い方が、一般的には慰謝料の金額は高額になると言えます。
2.有責性(の強弱)とは、法定離婚原因となった不貞等がどの程度のものであったか、またその結果として、ノイローゼやうつ病など、どの程度精神的苦痛を味わったかによって、強弱の評価が変わってきます。
そして、それらは裁判において、被害者が具体的に立証する必要があります。